心と身体

心とからだ

腹と心・腸と脳

私たち日本人は肚(はら)を大切に扱う文化があります。

肚が据わる

肚にしまっておく

肚の虫がおさまらない

など、

情動、感情のあるところを感覚的にハラと言っていたようです。

武士の切腹も、この(やるせない)感情をあの世にまで持っていかぬよう、現世で断ち切る意味で行ったということを聞いたことがあります。

確かに、怒りや不満の感情に支配されれているときには、お腹の辺りに重々しい感覚を覚えます。


この肚という字には「胃」という意味があります。

胃という字の構成は田と月。

田のもとの字は「囟」で、脳のこと。

月は「肉づき」ですから肉体のことです。

体の中心にある胃という字の構成が、消化という機能を意味しているのではなく、体と脳、言い換えると物理場と情報場を意味しているのがとても興味深いです。


怒りで「はらわたが煮えくりかえる」というときの、「はらわた」は「腸」と書きます。

腸は自律神経の親玉みたいな存在ですから、様々な情動のストレスを受けて反応するのでよく分かります。

腹部が緊張していたり、硬結(塊)があって、おなかの硬い人の病は慢性化しやすく、治りにくいという傾向があります。


腸は英語ではガット(gut)と言います。

英語で直感のことをgut feeling
と言います。

また、guts「ガッツ」は根性とか度胸などと訳されます。

西洋人も、感情はどうやらハラに収まっているらしいと思ったのでしょう。


さて腸は消化器官で、その名のとおり食物を消化をして栄養を吸収するのが役目です。

でもそれだけではありません。

腸には自律神経が張り巡らされ、心のあり方の影響を強く受けます。

ストレスや不安で下痢をしたり、食用がなくなったりするのは腸が自律神経に強く支配されているからです。


腸は大腸経と小腸とに大きく二つに分けられます。

小腸では心の安定に欠かせないセロトニンを大量に生産します。

また小腸のパイエル板では、私たちを病から守ってくれるリンパ球を生産します。(腸管免疫)

人間が心も身体も健康に生きるためには腸が丈夫でなければなりません。


私たち鍼灸師が、腹診でお腹の硬さや、張り具合をいつも意識しているのはこのためです。

鍼灸師治療は、腸管免疫機能を高め、自律神経機能を充実させて、慢性病や虚弱体質、うつ傾向の心、怒りっぽい性格など改善していきます。

「病は気から」というのは「病は肚(はら)から」のことでもあるのです。


お灸が虚弱体質によく効くのも、胃腸機能を整えるのに優れた療法だからです。

お灸は艾(モグサ)を燃やして皮膚上のツボを刺激しますが、火を使うので陽性の刺激です。

ツボから身体の芯に熱を通します。

そうして様々な病気を治してしまうことを考えれば、お腹を冷やすことがいかに身体に悪いかが分かります。

体温以下の飲み物を飲み続けながら、肩こりやアレルギーを訴えてもそれは当たり前なのです。

常温ならいいと思っている方がいますが、常温水は体温より低く、腸内温度からはさらに低いため、腸のためにはなりません。

話がズレますが、B'zの稲葉さんはあの素晴らしい歌声を保つために、温かいものしか飲まないと聞いたことがあります。

健康を保つためには、体温より冷たいものを控えるばかりでなく、外側からの冷えからもお腹を守らなければなりません。

暖かい季節になると、そこかしこでお臍を出している女性を見かけます。

それを見て、とても歯がゆい思いになります。

お臍の向こう側には、小腸があるからです。

夏は外が暑いものの、カフェなどに立ち寄ると、これでもかというくらい冷房が効いています。

そういう環境下におかれた身体がどういうことになるか、日本人の健康充実度が低いのは、こういうところからも影響を受けていると思います。


脳腸相関と言う言葉をご存じでしょうか?

先ほども少し触れましたが、心(情動)の状態で腸が影響を受け、またその逆で、腸の状態で脳の働きにも影響を受ける。


肚、腹を冷やすことは自律神経機能、免疫機能、内分泌系機能にも悪影響を与えるということは鍼灸では当たり前でしたが、最近ようやく西洋医学でも同じことを言ってくれる研究者、医学者が出てきているようです。

縁あってここにいらした皆さんには、ぜひお腹を冷やさないよう、心がけてくれるよう、祈っています。

表参道ビオ東洋医学センター